更年期になると、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌減少にともない、骨からの「カルシウム」の流出を防ぐ力が弱まり、著しく骨密度が低下します。
骨密度が低下すると、骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気「骨粗鬆症」になる可能性も出てきてます。
骨粗鬆症は、「寝たきり」の原因にもなる、怖い病気。
将来、健康でイキイキとした生活を送るためにも、早いうちから骨粗鬆症の予防をすることがとても大切です。

そこで今回は、骨を丈夫にする「食事のポイント」について紹介します。
管理栄養士がおすすめするメニューも参考にしてみてください。
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、骨密度が低下し、骨の中がスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。
骨がもろくなっているため、しりもち、くしゃみなど、軽い衝撃で、骨折してしまうことも。
さらに、高齢者にみられる、身長が縮む、腰が曲がるという症状も、骨粗鬆症による「圧迫骨折」が関係している可能性があります。
骨粗鬆症は、自覚症状がないので、骨折してから気がつくことも多い病気。
しかし、「寝たきりの原因」となる恐ろしい病気で、症状がないからといって放っておくと、とても危険です。
骨密度が低下する原因
骨密度は、カルシウムなど骨を構成している成分が、どのくらい詰まっていかを表す「骨の強度」の尺度。
カルシウムは、人体に一番多く存在するミネラルで、骨以外にも血液中や組織にも存在し、血液の凝固、神経伝達、筋肉の収縮など、生命維持に関わる大切な働きをしています。
骨は、「カシウムの貯蔵庫」としての役割もあり、血液中のカルシウムが不足すると、骨から補充され、一定量を維持しようとします。
そのため、「カルシウム」がしっかり摂取できていないと、骨密度は低下し、骨がもろく骨折しやすい状態に・・・。
さらに、加齢も要因。
加齢により、腸からの「カルシウム」の吸収が悪くなったり、カルシウムと一緒に骨を作るために必要な「ビタミンD」をつくる働きが低下したりします。
また、骨は一度作られると、そのまま維持されると思われがちですが、実は「作る」「壊す」の新陳代謝を繰り返しています。
女性ホルモンである「エストロゲン」には、骨の新陳代謝をコントロールする働きがます。
更年期になると、「エストロゲン」は減少し、骨からのカルシウムの流出を防ぐ力が低下。
したがって、骨粗鬆症は、女性に圧倒的に多い病気とされています。
骨粗鬆症を予防する方法
骨粗鬆症は、「生活習慣病」であるともいわれ、「食習慣」や「運動」が大きく関わっています。
骨の健康を維持し、骨粗鬆症を予防するために必要なことは
- 「毎日食事で、骨をつくる材料になる「カルシウム」などを十分に摂取する」
- 「運動を行い、適度に骨に負荷をかけ、骨を丈夫にする」
- 「適度に日光を浴びる」
です。
そこで、今回は骨を強くする「食事のポイント」を詳しくみていきましょう。
骨を丈夫にする食事(成分)
骨を丈夫にするために、積極的に食事に取り入れ、摂取したい栄養素は、「カルシウム」「ビタミンK」「ビタミンD」です!
POINT①カルシウム
まず、骨を丈夫にするために必要不可欠な栄養素は、骨の材料になる「カルシウム」。
飽食の現代ですが、日本人は「カルシウム」の摂取量が不足気味で、意識してカルシウムが豊富な食材を、摂取する必要があります。
食事摂取基準では、18歳以上の女性のカルシウムの推奨量は、1日当たり650mg。
骨粗鬆症の人は、1日700〜800mgの摂取を推奨されています。
(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」2015年版より)
また、カルシウムのサプリメントなどを摂取している方は、過剰摂取に注意する必要があります。(耐容上限量は1日あたり2500mgとされています。)
カルシウムが豊富に含まれている食材
乳製品、骨ごと食べられる小魚に豊富に含まれているカルシウム。
植物性食品ではゴマ、大豆製品、小松菜などの野菜にも含まれています。
食材100gあたりの「カルシウム含有量」
乳製品
- 牛乳:110mg
- ヨーグルト:120mg
- プロセスチーズ:630mg
魚介類
- しらす干し:520mg
- 干しエビ:7100mg
大豆製品
- 木綿豆腐:86mg
- 納豆:90mg
- きな粉:180mg
野菜
- 小松菜:170mg
- モロヘイヤ:260mg
- 切り干し大根:500mg
その他
- ゴマ:1200mg
POINT②ビタミンK
ビタミンKは、カルシウムが体外へ排出されることを抑制する作用があり、骨粗鬆症の治療薬としても使用されています。
食事摂取基準では、18歳以上の女性のビタミンKの目安量は1日あたり150μg。
骨粗鬆症の人は、1日あたり250〜300μgの摂取が推奨されています。(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」2015年版より)
ビタミンKが豊富に含まれている食材
ビタミンKは、脂溶性ビタミン。
そのため、油に溶けやすく、脂質を含む食品と一緒に食べたり、油で調理したりすると、吸収率がアップします。
食材100gあたりの「ビタミンK含有量」
- 納豆:600μg
- ホウレンソウ:270μg
- 豆苗:280μg
- 小松菜:210μg
- ニラ:180μg
- カットわかめ:1600μg
POINT③ビタミンD
ビタミンDは、ビタミンK 同様、骨を強くするために必要不可欠な栄養素。
カルシウムの吸収に必要なタンパク質の合成を促進することで、体内へのカルシウムの吸収をサポートする作用があります。
食事摂取基準では、18歳以上の女性のビタミンD の目安量は1日あたり5.5μgと設定されています。
また、骨粗鬆症の人は、1日あたり10〜20μgの摂取が推奨されています。(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」2015年版より)
ビタミンDが豊富に含まれている食材
魚介類やきのこ類に豊富に含まれています。
ビタミンD は、体内でも合成されますが、加齢により合成されにくくなり、食事からしっかり摂取する必要があります。
食材100gあたりの「ビタミンD 含有量」
- しらす干し:61.0μg
- クロマグロ:18.0μg
- 白鮭:32.0μg
- うなぎの蒲焼き:19.0μg
- 卵:2μg
- 乾燥きくらげ:85.4μg
- 舞茸:4.9μg
- エリンギ:1.2μg
管理栄養士おすすめの骨を丈夫にする簡単メニューとレシピ
主に骨を構成している「カルシウム」をたっぷり含む食材と、丈夫な骨づくりに欠かせない「ビタミンK」と「ビタミンD 」を組み合わせた、骨に嬉しいレシピをご紹介します。
牛乳と納豆のクリームパスタ
牛乳の「カルシウム」、納豆の「ビタミンK」を一緒に摂取できる、簡単パスタです。
納豆をいれることで、牛乳スープにとろみがつき、パスタによく絡みます。
牛乳は、カルシウムがとても豊富に含まれ、そのままでも飲むことができ便利な食材ですが、冷たい牛乳は、体質でお腹がゆるくなる方もいます。
そのような方は、料理に使用するなど、温めて摂取することをおすすめします!
材料 | 1人分 |
牛乳 | 150ml |
納豆 | 1パック |
ベーコン | 1/2枚 |
玉ネギ | 1/4個 |
豆苗 | 1/4 パック |
顆粒コンソメ | 小さじ1/2 |
塩コショウ | 少々 |
オリーブオイル | 小さじ1 |
牛乳と納豆のクリームパスタの作り方
①スパゲッティを表示通り茹で始めます。
②豆苗は食べやすい長さ、玉ネギは薄くスライス、ベーコンは1cm幅に切ります。
③フライパンへオリーブオイルを入れ熱し、玉ネギ、ベーコンを炒めます。玉ネギがしんなりしてきたら、豆苗を加えサッと炒めます。
④③へ牛乳、コンソメ、塩コショウを加え一度沸騰させます。
⑤沸騰したら火を止め、納豆、付属のタレ、茹でたスパゲッティを加え混ぜ合わせ、お皿に盛り付けたら出来上がり。

豆苗は100円前後で購入できる家計に優しい食材。
安いだけでなく栄養価も優れた食材で、骨の形成を助ける「ビタミンK」以外にも、コラーゲンやホルモンの合成を促進する「ビタミンC」、皮膚や目の健康を守る「ビタミンA」も含まれ、積極的に摂取したい野菜です。
牛乳に含まれる「カゼインホスホペプチド」は、カルシウムの吸収率を高める効果があります。
栄養価 | (1人前) |
エネルギー | 657kcal |
たんぱく質 | 27.3g |
脂質 | 18.5g |
カルシウム | 243mg |
ビタミンK | 315μg |
ビタミンD | 0.5μg |
ちりめんじゃこと小松菜のゴマたっぷりチャーハン
ちりめんじゃこ、小松菜、ゴマを使ったカルシウムとビタミンDがたっぷり摂取できる簡単チャーハンです。
ちりめんじゃこの塩気とゴマの香ばしい香りを活かして、少量の醤油のみで味付けをしました。
忙しい朝食時にも、パパッと作れる1品です。
材料 | 2人分 |
ちりめんじゃこ | 40g |
小松菜 | 2株 |
ニンジン | 2cm |
卵 | 2個 |
温かいごはん | 2膳分 |
煎りゴマ | 大さじ2 |
醤油 | 小さじ1 |
ゴマ油 | 小さじ1 |
のり | お好みで |
ちりめんじゃこと小松菜のゴマたっぷりチャーハンの作り方
①小松菜は細かく刻み、ニンジンはみじん切りにします。
ゴマはすり鉢で摩っておきます。
②フライパンへ、ゴマ油を入れ熱し、ちりめんじゃこ、ニンジンを炒めます。
ニンジンに火が入ったら、小松菜を入れ、しんなりするまで炒めます。
③②へ温かいごはん、ゴマを入れ混ぜ合わせます。
④ごはんをフライパンのはしへ寄せ、そこへ卵を割り入れ、スクランブルエッグを作ります。
⑤④へ醤油を入れ、全体的に混ぜ合わせ、お皿に盛り付け、海苔をトッピングして出来上がり。

ゴマには、 カルシウム以外に、抗酸化作用がある「セサミン」や「ビタミンE」、疲労回復効果がある「ビタミンB1」などの栄養が詰まっています。
ゴマの外皮は硬くそのままでは消化、吸収されにくいので、しっかり摩って利用しましょう。
栄養価 | (1人前) |
エネルギー | 533kcal |
たんぱく質 | 28.7g |
脂質 | 15.6g |
カルシウム | 686mg |
ビタミンK | 4.7μg |
ビタミンD | 120μg |
甘くない!カルシウムたっぷり惣菜フレンチトースト
野菜やチーズをパンの中に挟んでつくる甘くない、惣菜パンです。
パンに挟む具材は、電子レンジで加熱し時短に!
とろ~りチーズが美味です。
材料 | 1人分 |
食パン 6枚切り | 1枚 |
スライスチーズ | 1枚 |
牛乳 | 150ml |
卵 | 1個 |
玉ネギ | 1/4個 |
ホウレンソウ | 1株 |
塩コショウ | 少々 |
乾燥バジル、パセリなど | お好みで |
惣菜フレンチトーストの作り方
①食パンは、半分に切り、具材を挟めるように切り込みを入れます。
②チーズは2等分、玉ネギは薄くスライス、ホウレンソウは幅2cmに切ります。
耐熱容器に玉ネギを入れ、ラップでフタをし、電子レンジで1分加熱します。そこへホウレンソウを加え、さらに1分加熱します。
③切り込みを入れた食パンに、チーズ、玉ネギ、ホウレンソウを挟みます。
④ボールへ卵、牛乳、塩コショウ、乾燥バジルを入れよく混ぜ合わし、具材を挟んだパンを浸します。
⑤食パンに卵液が染み込んだら、オリーブオイルを引いたフライパンで、両面焦げ目がつくまで焼いて出来上がり。
栄養価 | (1人前) |
エネルギー | 452kcal |
たんぱく質 | 22.0g |
脂質 | 22.6g |
カルシウム | 307mg |
ビタミンK | 147μg |
ビタミンD | 1.4μg |

牛乳は、加熱をしてもほとんど栄養価は変わりません。
カルシウムには、精神的な不調を和らげる効果があります。
ホルモンバランスの乱れで「イライラ」しやすい更年期の女性には、しっかり摂取して頂きたい栄養素です。
まとめ
骨粗鬆症予防には、「カルシウム」以外にも「ビタミンD」 や「ビタミンK」などを含む食材も一緒に、バランスのとれた食事がとても大切です。

また、加工食品に多く含まれる「リン」や「食塩」は、カルシウムの吸収を妨げます。
なので、加工食品をよく食べる方は注意しましょう。